キツネ色と言うけれど・・・
カレーに欠かせない食材といえば玉ねぎだろう。
「玉ねぎをどれだけ上手く炒められるか」ということにカレーの味は大きく左右される。
玉ねぎを炒めるという重要な作業、その加減の基準となるのが色だ。
火を通していない状態では白色から薄い緑をしているが、火が通るにつれて黄色、褐色、茶色と変化していく。
色を基準にしているのだから、「玉ねぎが黄色になるまで〜」とか、「褐色になったら〜」と言えば良さそうだが、そう簡単にはいかない。目に移る色が何色なのか、という判断は個人差が大きいからだ。
黄色と言われて、月を思い浮かべる人もいれば、ヒマワリを連想する人もいる。比べてみれば全然違う。でも、その人にとっての黄色はそれなのだ。
そんなわけで「黄色になるまで」と伝えてしまうと、いろんな炒め具合の玉ねぎができてしまう。
人それぞれの感覚の差よってできるものが変わってしまうというのは、レシピを考えるときに頭を悩ませることのひとつだろう。
そこで解決策として、ほとんどのレシピで採用されているのが「キツネ色」や「あめ色」などのモノの色で例える方法である。
水野仁輔氏の「カレーの教科書」では、玉ねぎの炒め方を6段階に分けているが、それぞれ
- ウサギ色
- イタチ色
- キツネ色
- タヌキ色
- ヒグマ色
- ゴリラ色
と呼んでいる。
なるほど、これならわかりやすい。・・・と思ってしまいそうだが、実際のところはどうだろう?
確かに「キツネ色」や「あめ色」とした方が狙いが定めやすい感はある。
しかしながら、そのとき思い描く「キツネ色」というのは、自分の中にある「いい具合に炒めたときの色」なのであって、わざわざ「キツネってこんな色してるよなぁ」と思い描きながら炒めることはない。
そもそもキツネがどんな色をしてるか、よく知らない。
試しにグーグル先生で「キツネ」と画像検索してみると、想像以上に画面が茶色くなった。
「キツネ色」でさえこの有様。「あめ色」なんて「玉ねぎをいい具合に炒めたときの色」としか認識できない。「あめ」の色なんて想像しようがない。おばあちゃんがよくくれたあの飴の色なんだろうな、とは検討が付くが、それを期待されているとしたらなかなか乱暴な話である。
結局、何色と呼んだところでどうしても個人差が出てしまう。
だが、最初に立ち返ってみると、目的は「上手く炒める」ということだったことに気がつく。
上手くというのは、美味しくなるようにと同義であり、それを判断するのは自分だ。
であれば、「美味しくなるように炒めた玉ねぎの色」を「キツネ色」と呼び、「キツネ色より気合いを入れて炒めたときの玉ねぎの色」を「あめ色」と呼ぼう。それで解決だ。
問題は、「美味しい」とは何かということだ。これにも個人差があって・・・
もうやめようか。
今日の一皿
今日はゆで卵カレー。
肉も魚も入っていない、玉ねぎだけのカレーにゆで卵をトッピング。ライスはバターとニンジンで香りと見た目に手を加えた。
玉ねぎだけでどれだけ美味しいカレーが作れるか、というのは面白くて難しい課題だと思う。
あっさりめにして食感を残すのもいいし、しっかり炒めて甘みを強く出すのもいい。
カレーを構成するほんのひとつに過ぎない玉ねぎ。それだけでも気が遠くなるほど考えることがある。
カレーってほんと奥が深い。